システム開発におけるフィジビリティスタディとは?意味や考え方を徹底解説
フィジビリティスタディについてこんな疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか?
- フィジビリティスタディの目的がわからない
- フィジビリティスタディの役割がわからない
- フィジビリティスタディとPoCとの違い・重要性や必要性がわからない
上記のような疑問にお応えしていきます。
この記事を読めばこれがわかる!
☑️ フィジビリティスタディとは? ☑️ フィジビリティスタディの進め方 ☑️ フィジビリティスタディの具体例
この記事を書いている私は、IT業界未経験でEnlytに入社し現在Webディレクターとデザイナーを兼任しています。
目次
フィジビリティスタディとは?
フィジビリティスタディの意味
システム開発におけるフィジビリティスタディとは、新規開発をはじめる際にその事業の実行可能性や採算性を調査すること、つまり、プロジェクトが成功する可能性を見極めるプロセスです。
フィジビリティスタディの目的と役割
「フィジビリティスタディ」の目的:
新規開発を開始するにあたり、事業の外部要因(政治、法制、経済、業界の動向、社会環境といったマクロ環境)や内部要因(技術開発や販売計画、投資対効果、採算性、資金調達等の財務面など)を調査することによって、開発を行う内容が事業として成り立つか、といった実現可能性を考察する為に行われます。
事前調査をすることで、開発後に「市場に需要がないことがわかった」「採算性が悪いことがわかった」などのリスクを回避することが可能です。
「フィジビリティスタディ」の役割:
開発におけるフィジビリティスタディの役割とは、開発を実行するか否かの判断基準・土台です。
計画に対して、どんな競合がいて世間的な状況はどうなっているのか・費用対効果は良いのか、などの調査は必要不可欠です。
そのためにも、対象となる市場・適用される法律・開発にかかる費用など、開発の内容に関係する項目・内容を洗い出し、細かく内容を詰めていきます。
他にも、開発中・リリース後・運用中に考えられるリスクやトラブルを想定し、それに対する事前対応策・事後対応策を定めておく必要もあります。
その開発プロジェクトが企業にとって有益か否かを判断するためにも、フィジビリティスタディは重要な役割を担っているのです。
「フィジビリティスタディ」が無いと何が問題か:
フィジビリティスタディは先述したように、外部要因・内部要因を調査し、開発を実行するか否かの判断基準を設けるために行われるものです。
行わないことによるリスクとして下記のようなケースが考えられます。
- 開発の発注をベンダーに依頼し、要件定義を行なった後に採算が取れないことが判明した
- リリースを行なった後に市場のニーズがないことに気付き、利用されないシステムとなってしまった
- 開発すること自体には問題はないが、フィジビリティスタディを行うことにより効果が最適化されていた可能性があった
その為、システム開発・依頼・着手というフェーズに入る前に、調査を行うフェーズは必要不可欠となります。
「フィジビリティスタディ」と「PoC」の違い:
PoCとは、「Proof of Concept」(概念実証・実験)のことで、新規システムを開発する場合、導入する前に技術・コスト・運用面などにおいて実効性があるかどうかを検証することを指しています。
これだけ聞くと、フィジビリティスタディとの違いはないように感じますが細かく定義した場合、フィジビリティスタディを行った後にPoCに移るのが正しい順序です。
フィジビリティスタディでまず、新規開発の課題を明確にし、解消したい課題の優先順位や実行のための仮説をたてます。その際の検討内容は、市場調査やコスト面・経済分析など様々です。
その後PoCにて課題が解消するかどうか検証を行っていきます。PoCでは主に技術的・費用的に実現できるかどうかを判断します。
フィジビリティスタディの歴史
フィジビリティスタディは、1933年にアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトが世界恐慌の対策としてテネシー川流域開発公社(TVA)を設立した事例がはじまりです。
テネシー川流域開発公社では、個々の事業を展開するために技術や経済の実現可能性を調査し、環境や政治の調査が行われました。
結果として失敗のリスクを大幅に減らすことに成功して、現在ではダムや空港、ごみ処理場などをはじめ民間企業でも多く実践されています。
フィジビリティスタディの進め方
フィジビリティスタディで行うべきこと
・課題の明確化
はじめに、プロジェクトに関する課題を明確化します。
新しい作業の実現性や人員、予算、業務、リスクなどの問題を明確にしましょう。考えられる問題を洗い出しておけば、解決するための期間やコストも特定ができます。
問題点はなるべく具体化することがポイントです。
・要求・制約事項をリストアップする
タスク内容の概要・課題を明確化した後、課題解決のための要求事項をリストアップします。例えば、効率化するための新しい組織やシステム、業務、技術などをリスト化しましょう。
リスト化すれば課題解決までにかかるプロセスやコストも必然的に特定できます。
・代替案を用意する
PoCの段階で考えていた案が、実現できないことも少なくはありません。
そのためにもいくつかの代替案を用意しておき、万が一に備えておくことが大切です。実現可能な代替案を明確化し、問題がなければ実行へと移していきます。
効率良くフィジビリティスタディを進めるためにも代替案は用意しておきましょう。
・結果を評価する
最後にフィジビリティスタディを実行したあと、結果を評価します。
例えば、実行中に発生した問題や成果などの記録をもとに結果を出します。結果はプロジェクトの関係者や融資している企業や投資家に関与する重要な部分なので、必ず評価して報告書へまとめましょう。
もし問題点があっても、最終的な利益を得られるかどうかが評価の基準です。
フィジビリティスタディの評価領域
・技術能力
組織にはプロジェクトの実行に必要な技術能力とリソースがあるか
・予算
組織にはプロジェクトを実行する資金があるか、また、コストと便益の分析は、プロジェクトを実行するにあたって満足できるものか
・適法性
プロジェクトの法的要件は何か、また、企業のビジネスはそれを満たすことができるか
・リスク
プロジェクト実行に潜むリスクがあるか、認識されているメリットに対し、そのリスクを冒す価値があるか
・運用上の実行可能性
提案されたスコープ内で、問題を解決し、認識されたチャンスを利用することによって組織のニーズを満たすことができるか
・期間
会社にとって有利で妥当と思える期限内に、プロジェクトを完了できるか
フィジビリティスタディの具体例
Enlytとベトナム開発拠点のSupremeTechで企画・開発を行っている自社プロダクト「MiaHire」の事例をご紹介します。
当プロダクトが生まれた背景は、コロナ禍でSupremeTechの採用方法をオフラインからオンラインに切り替えざるを得なくなったということがきっかけにあります。当時のSupremeTechでは100名の応募者から7名を採用する為に、人事3名+採用責任者1名+CEO1名というコストをかけていました。
そこで人的リソースを削減する為に、一次面接の代替となる動画面接サービスの開発を開始しました。
開発にあたり、まずは市場に焦点を当て、サービスに対する需要が見込めるのか調査が行われました。
2019年までは実際に会って行っていた面接が、2020年には全てリモート面接に切り替わり、全世界の採用市場でリモートでの採用プロセス導入が必須となりました。
中でも、採用人材に専門性は求めないが面接頻度が多い業種や、コミュニケーション面・言語などを重視して採用活動をしている業種などは、応募数に対して人事が間に合っていない・人事への負荷とコストが大きいという採用市場でのデータがありました。
例えば、フードデリバリーや外国人労働者の人材斡旋企業など、面接頻度の高い業界が挙げられます。
市場性に関してはターゲットとする業種も目処が立っており、人的コスト削減のための需要も高いことが分かりました。
次は採算性です。
見込んでいる需要に対する開発のコストが高すぎて採算が取れないという事態にならないか、検討しました。
今回のSupremeTechにおける開発のケースは、下記2点のようなメリットが想定出来ました。
- 自社内にPM・エンジニア・テスターを抱えている為、外部のベンダーに発注をして開発を進める必要が無く、コストは人件費のみ。
- 面接に割くリソースだけでは無く、面接の為の日程調整・応募者とのやり取りにかかっていた時間が無くなることで約85%の工数を削減可能。
社内のリソースを使用して、確実にオペレーションにかかる工数が削減できるという試算から、採算性には問題がないという推定が出来ました。
MiaHire の事例においては、大きく上記2点のようなフィジビリティスタディに必要となる要素をクリアしていたことから実際の開発着手へと繋がりました。
MiaHireについてはこちら
フィジビリティスタディのまとめ
フィジビリティスタディには、新規開発開始前の外部・内部要因の調査を行い、開発する内容が事業として成り立つか・リスクがないかという実現可能性を見極める目的があります。
またフィジビリティスタディには、開発を実行するか否かの判断基準・土台という役割があります。
この目的と役割を果たすためには、フィジビリティスタディを行う上での項目や評価領域に注意して事前準備やPoCとの併用を行っていくことが重要です。
Enlytについて
株式会社Enlytはベトナムに開発拠点SupremeTechを持ち、Enlytではこれまで50以上の開発プロジェクトを行ってきました。( 株式会社Enlytの実績は開発実績ページから)ベトナムと日本のグローバルなチームで、数多くのプロジェクトを成功に導いてきました。
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