【会長インタビュー】スタートアップがAIのR&Dにかける思い
株式会社Enlytではベトナム拠点である株式会社SupremeTechのエンジニアと連携してAI(人工知能)のR&D(研究開発)を行っています。取り組むに至った経緯や思い、今後の展望についてEnlyt代表取締役会長のTruong Dinh Hoangに話を聞きました。
目次
プロフィール紹介
名前: Truong Dinh Hoang(チュオン・ディン・ホアン)
年齢: 41歳(1980年生まれ)
国籍: ベトナム(日本永住権保持者)
出身地: フエ市(19-20世紀にかけて存在した阮朝の首都に定められていたベトナム中部の都市)
学歴: ベトナムと日本の大学でコンピュータ・サイエンスと日本語を専攻
「最先端のテクノロジーが分からないIT企業は恥ずかしい」
インタビュアー:株式会社Enlyt及びベトナム拠点の株式会社SupremeTechではAIのR&Dプロジェクトを立ち上げ、画像認識技術を中心に研究開発を続けています。プロジェクト発足に至った経緯を教えて下さい。
みなさんは「最先端のテクノロジー」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。私は「AI(人工知能)」「IoT(モノとインターネットの連動)」「ブロックチェーン(分散型システムと暗号化技術による情報管理)」の3つがこれからのビジネスを大きく変える、DX(デジタルトランスフォーメーション)の核となる革新的な技術であると考えています。
実はEnlytを設立する数年前から、つまり以前別のソフトウェア開発会社を経営していた頃からこれら新技術についての研究開発を行ってきました。例えばIoTの事例としてはオフィスの照明とチャットツールをインターネットを介して連携させ、チャットボットに特定のメッセージを送るだけで一部、或いは全ての照明の点灯・消灯を纏めて操作できる仕組みを開発、自社に導入しました。ブロックチェーン技術については人材管理に活用できないかと考え、人事評価をブロックチェーンで管理することで個々人の経歴や評価を会社を跨いで誰でも参照できる仕組みを検討しました。こちらについてはR&Dをリードできるような知見のある人材が当時はいなかったため、形になる前にお蔵入りとなってしまいましたが(笑)
インタビュアー:なるほど、これまでも新技術についての研究開発を継続的に行ってきたのですね。そのモチベーションはどこから来るのでしょうか?
私は「最先端のテクノロジーが分からないIT企業は恥ずかしい」と思っています。
私達のいるIT業界は、他の業界と比較して最も変化の早い・激しい業界の1つであると言えます。ソフトウェアエンジニアは常に勉強を続け、知識をアップデートしていかなければならないとよく言われていますが、それは企業経営にも当てはまると思います。つまり、企業としても最先端の技術に挑戦し続けなければ、あっという間に知見は陳腐化し、時代に取り残され、企業価値はなくなってしまうのです。
ですので個人も企業も、今ある技術で価値を提供するだけでなく、並行して勉強を続ける必要があります。これはすぐにはお金に結びつかない「投資」といえますが、自己投資が必要なのは個人も企業も同じなわけですね。
あるAIスペシャリストとの出会い
インタビュアー:EnlytでAIのR&Dに取り組み始めたきっかけについて教えて下さい。
先述の通り、これまでIoTとブロックチェーンには取り組んできたので、いずれAIも…という思いはありました。どのような研究にしようか思案していたところ、ある在日ベトナム人のAIスペシャリストから連絡があります。
実は以前から彼を含む日本で働く将来有望なベトナム人の若手達に招待され、先に起業した先輩として技術の勉強会やキャリア設計について講演することが度々ありました。その中で知り合った彼から「専門のAI技術を使って事業を興したいがどのようなサービスが良いか相談に乗って欲しい」と打診があったのです。
彼は東京大学を卒業した後、コンサルティングファームでの経験を経て、AIの技術者兼コンサルタントとして活躍する人物で、AI活用を検討するクライアントの要望をヒアリングしていく中で「事業の構想は固まっても実現するエンジニアがいない」という課題を肌身で感じていました。これは 経済産業省による調査 でも「AIエンジニアは2030年に10万人以上不足する」との予測が出ているように、社会的な課題であるとも言えます。
そこでEnlyt及びSupremeTechと共同でAIのR&Dプロジェクトを立ち上げ、R&Dを通してAI事業化の可能性を模索するという短期的なミッションと、数年がかりで将来の担い手となるようなAIエンジニアを育成するという長期的なミッションに、同時に取り組むことにしました。
研究開発から製品化へ
インタビュアー:AIのR&Dについて考えていたときにAIのスペシャリストから連絡があったのですか。。引き寄せの法則というか、素晴らしい縁ですね。具体的にはどのようなR&Dを行っているのでしょうか?
もともとEnlytでは動画配信プラットフォーム Cloud TV を世に出しており、映像関係の技術に知見がありました。先ずはこれを活かして親和性の高い画像処理周りでAIのSDKを開発し、その独自SDKをベースに、「顔写真を使ってメガネを試着するアプリ」や「オンライン受験向けにカメラを通して本人認証とカンニング検知を行うシステム」などを試作しました。
これらの試作を通して様々なノウハウが得られたので、現在はAI採用面接サービスの開発に取り組んでいます。
インタビュアー:製品化、事業化の目処はたっていますでしょうか?
はい、実はこのAI採用面接サービス「MiaHire」はほぼ完成しおり、実際にSupremeTechにおけるインターンシップの採用活動で試験的に導入し、短期間で大勢の採用につなげることができました。
次のステップとして2021年6月頃を目処にベータ版を世に出し、そこで得られたフィードバックを反映した完成版を同年8月頃にリリースする予定です。既にベータ版、完成版共にご利用いただけそうな企業様にも何社かお声がけいただいており、ご期待に添えるよう最終調整に注力しています。
今後の展望について
インタビュアー:R&Dの成果がリリース目前というわけですね。こちらのサービス詳細については今後の記事で現場メンバーに語ってもらおうと思います。MiaHireリリース後のプランは何かありますでしょうか?
ベータ版のリリース後はもちろん、完成版のリリース後にも多くのユーザ様にご利用いただく中で得られる学び、フィードバックは少なくないと思います。ですので、当面はこのMiaHireのブラッシュアップに集中していくつもりです。
また、MiaHireのリリースによってAI技術の事業化という短期的なミッションについては1つの成果を残すことになりますが、一方でAIエンジニアの育成という長期的なミッションについては引き続きじっくり腰を据えて取り組んでいく必要があります。既にMiaHire以外にもAI技術を用いた構想がいくつかあるので、SupremeTechのエンジニアにはこれら自社プロダクトの研究開発を通して最高の学習環境を提供していけると考えています。
AIのR&Dにおいて短期的・長期的なミッションの両方で満足のいく結果を残すことができた暁には、再びブロックチェーンのR&Dに挑戦してみるのも面白いかもしれませんね。前回はリードできる人材がおらずフェードアウトしてしまったので、この失敗を生かしてAIのR&DにおけるAIスペシャリストのようなリーダーを見つけるか育て上げるかしてリベンジしたいと思います。もちろん他の切り口からIoTに取り組んでもいいですし、別の最先端テクノロジーが登場すればそちらにもチャレンジしていきたいですね。
Enlytについて
株式会社Enlytはベトナムに開発拠点SupremeTechを持ち、これまで50以上の開発プロジェクトを行ってきました。ベトナムと日本のグローバルなチームで、数多くのプロジェクトを成功に導いてきました。
Enlytのオフショア開発は、アジャイル・スクラム開発を採用しています。コミュニケーションの透明化を意識してそれぞれの役割で責任の範囲を明確化しています。クライアントも含めたワンチームとして、フラットな関係で開発を進めることができます。
お客様の納得のいくまで、共に開発させていただき、アイデアを最高のかたちにサービス化いたします。
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