なぜスリランカのトゥクトゥクは「安くて早いUX」を実現できるのか ─ Uber体験から考える交通とプロダクト設計
みなさん、こんにちは。Enlytの久保です。
スリランカ滞在中、Uberでトゥクトゥク(現地ではスリーウィーラー)を普通に呼べることが面白くて、最初は“観光のノリ”で乗っていました。
でも12/25の夜、ディナーへ向かう途中にコロンボの大渋滞にハマったとき、体験が一変します。「今日は遅れるな…」と思った瞬間、トゥクトゥクが車列の隙間をスルスルとかいくぐって、渋滞を抜けていったんです。しかも料金は普通車よりだいぶ安い。安いのに、早い。
この“逆転”が気持ちよすぎて、これはただの旅行ネタじゃなく、UI/UXや設計の話として書けるなと思いました。
目次
Uberでトゥクトゥクに乗れるという「体験の入口」
トゥクトゥクは普通車より安い(体験として分かりやすい)

実際にアプリ上では、トゥクトゥクが普通車よりかなり安く表示されます(添付スクショの通り)。
- 体感:普通車の“半分くらい”の価格帯で出てくることが多い
- 期待:安い=遅い(日本の感覚)
- 現実:渋滞次第で、安いのに早い
大渋滞で気づいた「トゥクトゥクは速いんじゃなく、止まらない」
この日すごかったのは、トゥクトゥクが「速い」から勝ったわけじゃない点です。
スピードを出しているというより、止まらない設計で勝っている感じ。
- 車幅が狭い(四輪より小さい)
- 車長も短い
- 小回りがきく
- 車列の“隙間”という未使用レーンを使える
このあたり、UI/UXでいうと
「クリック数を減らす」とか、「詰まらない導線にする」に近い感覚でした。
※ここで「渋滞ルートの地図+到着時間」のスクショを入れると、体験のリアリティが一段上がります。
なぜ「安くて早い」が成立するのか:スペックではなく“前提条件”の違い
「速い設計」ではなく「止まらない設計」
日本だと“速さ”って、馬力とか道路とか、スペック寄りに語られがちです。
でもコロンボの渋滞の中では、スペックよりも
- 小さくて、曲がれて、すり抜けられる
- 停車のストレスが少ない
が圧倒的に効きます。
つまりトゥクトゥクは、最高速の勝負じゃなくて、渋滞という環境に最適化されている。
「用途特化」が結果として“体験価値の最大化”になる
トゥクトゥクは万能じゃないです。雨風、快適性、安全性など、四輪が勝つ領域もあります。
でも「都市部・短距離・渋滞」という条件では、トゥクトゥクが強い。
プロダクトでも同じで、全部入りを目指すと中途半端になりがちで、
“勝つ条件”を決めて最適化する方が、体験として強いことがあるんですよね。
日本のタクシーが高い理由を整理すると「高品質を前提にした制度設計」だった
ここからはGensparkで調べた内容を、要点だけ“設計の言葉”に翻訳してまとめます。
法規制:価格競争が起きづらい構造
日本のタクシー運賃は、国交省認可が必要な「公共料金」的な扱いで、自由に値下げしづらい構造があります(道路運送法の枠組み)。
参考:国土交通省資料
また、参入にも許可や条件が絡み、需給調整(台数の考え方)もあって、結果として料金が横並びになりやすい。
労働コスト:人件費の高さがそのまま反映される
運転手の賃金水準が高く、歩合制も一般的で、ビジネスモデルとして“ある程度の運賃”を前提に成立している側面があります。
参考:日本経済新聞(賃金水準の話)
車両・保険・安全:運用コストが高い(でも安心は強い)
営業車は車検や点検など維持管理の頻度が高く、保険も含めてコストがかかりやすい。
参考(制度や安全基準の背景):内閣府資料
(※note等の個人記事は補助情報として扱うのが無難です)
ユーザーの期待値:日本は“サービス品質”を前提にしている
日本のタクシーって、清潔、丁寧、静か、正確…が当たり前のように期待されます。
この期待を満たすには教育・管理・オペレーションが必要で、その分コストが上がるのは自然。
ビジネスモデル:総括原価方式という「コストが運賃に乗る仕組み」
運賃決定が総括原価方式(営業費+適正利潤)に基づくため、コスト構造が運賃に反映されやすい面があります。
参考:国土交通省
ここまで整理すると、日本のタクシーが高いのは単に「ぼったくり」とかではなく、
“高品質を前提にした制度設計・市場設計”の結果だと見えてきます。
なぜ日本でトゥクトゥクが普及しないのか:制度・文化・UXがミスマッチ
制度:そもそも営業として成立しづらい
三輪車の安全性がネックになりやすく、営業許可のハードルが高い。
実際に有償運送で問題になった事例もあります。
参考:朝日新聞
文化:日本は「安心・清潔・プロの接客」が標準
トゥクトゥクのカジュアルさ(オープンエア・騒音・揺れ)って、観光なら楽しいけど日常の足としては“好みが割れる”のも正直わかる。
UX:日本の四季がトゥクトゥクに厳しい
梅雨、猛暑、冬、台風。
「密閉+冷暖房+防音」が求められる条件が多いので、トゥクトゥクが日常交通の主役になりにくい。
参考(梅雨時のタクシー需要の話など):ウェザーニュース
結果として日本では、トゥクトゥクは「移動手段」より「観光アクティビティ」側で活用されることが多い。
参考:PR TIMES(観光用途の例)
スリランカで成立している理由:都市と文化に最適化されている
交通事情:渋滞×公共交通の限界を埋める
コロンボの渋滞は深刻で、道路インフラや公共交通の制約もある中で、ドアtoドアで動ける小型交通が強い。
参考:JETRO
都市設計:狭く複雑な道路に小型が刺さる
狭い道、複雑な導線、舗装状況…そういう環境にトゥクトゥクがフィットしている。
価値観・期待値:完璧より実用性(速さ・安さ・柔軟さ)
「多少荒くても、早く着けばOK」みたいな期待値のバランスが成立していると、体験としての最適解が変わります。
配車アプリ:交渉UXを消して、透明性を上げた
UberやPickMeの普及で「料金交渉」みたいなストレスが減り、使いやすさが上がった。
参考:幻冬舎ゴールドオンライン
プロダクト開発と同じ話だった:UXは“前提条件”で決まる
機能の多さや高級さがUXを決めるわけじゃない
日本のタクシーは、品質の期待値に合わせて制度と運用が組まれた結果、料金も上がる。
スリランカのトゥクトゥクは、都市と交通事情に合わせて“勝てる条件”に最適化している。
どっちが上、ではなくて、前提が違う。
「誰が、どこで、どんな状況で使うか」が設計のスタート地点
今回の体験で一番刺さったのはこれでした。
渋滞という現場で、“勝つための条件”が違うだけで、体験価値がひっくり返る。
プロダクトも同じで、
機能や見た目を頑張る前に、まず
- 誰が(ユーザー)
- どこで(環境)
- どんな状態で(制約・心理)
- 何を最優先するか(価値)
を決めないと、UXの評価は安定しないなと。
まとめ:トゥクトゥクは「思想で動くプロダクト」だった

スリランカでトゥクトゥクに乗ってみて、いちばん驚いたのは“乗り物の性能”じゃなくて、その国の前提条件に合わせて体験が設計されていることでした。
安いのに早い、っていう体験は、偶然じゃなくて、都市・制度・文化のバランスの上に成立している。
プロダクトも、機能が多いとか、最新技術とかより前に、まず「前提条件」をちゃんと設計できているか。
コロンボの渋滞を抜けながら、そんな当たり前のことを改めて考えさせられました。



