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Inter BEE2024で見たFASTチャンネルの未来 ― 日本における展開可能性とその将来像
2024年11月13日から15日にかけて開催された Broadmedia & Entertainment Inter BEE イベントは、まさにOTT業界の祭典でした。今年で60回目を迎えたこのイベントには、1,058の企業・団体が参加し、初日だけで12,202名もの来場者が集まりました。その熱気あふれる会場に、弊社 Cloud TVと海外展開ブランド OTTcloudsも出展し、独自のOTTソリューションを披露しました。
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目次
最新技術とサービスが集結する展示会 ― Inter BEEの魅力
Inter BEEは、最新の技術やサービスが一堂に会する場として、業界関係者にとって欠かせないイベントとして開催されており、今年も動画配信基盤、トランスコーディング技術、放送・配信インフラといった注目のソリューションが数多く展示され、来場者を魅了しました。
弊社ブースの見どころ
弊社では、All-in-one配信ソリューションをテーマに掲げ、以下の提供内容を紹介しました:
- FASTチャンネルや見逃し配信VODなどのサービス
- CMS(コンテンツ管理システム)から視聴アプリ(iOS/Android/Web/TVアプリ)までの一貫したソリューション
特に、国内最大規模のケーブルテレビ向けアプリの開発実績を活かし、リアルなデモイメージを披露したところ、多くの業界関係者から熱い関心をいただきました。
日本のアニメを世界へ ― ショート動画パッケージの人気
さらに、日本のアニメをグローバル市場へ届けるためのショート動画パッケージもご紹介。ブースでは、この革新的なコンテンツソリューションに多くの注目が集まり、数多くの見積もり依頼をいただく結果となりました。
Inter BEEで得たつながりと今後の展望
この展示会は、最新技術の発信だけでなく、世界中のパートナーやクライアントとつながる絶好の機会でもあります。今後も、より多くの価値を提供するべく、技術革新とサービスの向上に努めてまいります。
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弊社Cloud TVのブース。ベトナム開発拠点のCEOとテックリードも参加
ブースに来ていただいた方々の反応から、「FASTとは何か?」「日本ではどういった展開をしていくのか?」などご質問をいただいたので、本記事でも配信サービスについてまとめたいと思います。
配信サービスの進化
配信サービスの歴史を振り返ると、視聴者のニーズや技術の進化に応じて、そのモデルも進化してきました。現在の主な配信モデルは、以下のように分類できます。
・SVOD(定額制見放題動画) – 有料課金型オンデマンドサービス。NetflixやAmazon Prime Videoが代表例ですが、競争激化による成長鈍化が課題となっています。
・AVOD(広告型動画配信) – 広告収益型オンデマンドサービス。YouTubeがこのモデルを代表し、特に近年、急成長を遂げています。
・vMVPD(有料ストリーミングTV)– 従来の放送局の編成と連動した月額有料課金型サービス。YouTube TVがその例ですが、アメリカ市場以外では普及が遅れています。※MVPDは従来のCATV・衛星放送のこと。vMVPDはそれをインターネットで見られるもの
・TVOD(都度課金型動画配信) – 都度課金型のオンデマンドサービス。一部の特化型コンテンツに需要がありますが、SVODとAVODの普及に押され、成長が低調です。
・FAST – 次世代の広告型リニア配信モデルとして注目。広告主と視聴者の双方に価値を提供する新たなモデルです。
CTVとD2Cの進化
現代のメディア視聴体験は、大きな転換期を迎えています。
従来のテレビはCTV(Connected TV)へと進化し、視聴者に多様な選択肢を提供しています。そして、CTVの台頭は、D2C(Direct to Consumer)モデルビジネスの発展を後押しし、企業が視聴者に直接リーチする機会を拡大しています。
こうした流れの中で、次なるステージとして注目されているのがFAST(Free Ad-Supported Streaming TV)です。
モデレーターの議論では、CTVを導入として、メディア消費の変化とOTT配信サービスの進化に触れた後に、FASTがどのようにブルーオーシャンとしてのポテンシャルを持つかを強調しました。
FASTとは?
FAST(Free Ad-supported Streaming TV)は、広告付き無料ストリーミングTVサービスを指します。
特徴としては以下が挙げられます。
・無料視聴:視聴者に経済的負担をかけず、幅広いコンテンツを提供。
・リニア形式:通常のテレビのようにチャンネルを選択する感覚で視聴可能。
・広告主導型モデル:広告主にとっては新たなリーチ機会となり、効果的なマーケティング手法として機能。
アメリカ市場では、2019年以降に急成長し、RokuやPluto TVがその市場をリードしています。
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日本の未来を支える「FAST」と「CTV」のポテンシャル
日本におけるFAST事業の展開可能性と将来像
イベントで特に印象深かったのは、「日本におけるFAST事業の展開可能性と将来像」をテーマにしたパネルセッションでした。このセッションでは、現在の日本市場におけるFASTの可能性が議論され、参加者たちに大きなインパクトを与えました。
日本初!独立型FASTチャンネル「スマイLINK」
セッション内で紹介されたのが、大阪ガスが提供するスマイLINK。このサービスは、CTV(Connected TV)プラットフォームの一部として提供されるものではなく、日本初の独立した本格的FASTチャンネルとして注目を集めました。
スマイLINKは、国内におけるFAST事業の新たな基盤となる可能性を秘めており、そのユニークな立ち位置が業界関係者の関心を引きつけています。
視聴者と広告主に新たな価値を提供するFAST
FASTの最大の特長は、広告主導型の収益モデルを活用し、視聴者には無料で多彩なコンテンツを提供しつつ、広告主には新たなリーチ機会を創出する点です。
- 視聴者へのメリット: 広告を見るだけで、豊富で質の高いコンテンツを無料で楽しめる。
- 広告主へのメリット: テレビのような環境で効率的にターゲット層にリーチできる、新しい広告チャネルとして機能。
このように、FASTは視聴者と広告主の双方に大きな価値をもたらす画期的なプラットフォームであり、今後の日本市場での展開が期待されています。
日本市場を変革する可能性
FASTとCTVの成長は、日本のメディア業界にとって重要な転機となるでしょう。これらの技術がもたらす新しいビジネスモデルは、既存の放送やストリーミングの枠を超え、さらなるイノベーションを加速させる可能性を秘めています。
未来への展望
「スマイLINK」を皮切りに、国内でのFASTチャンネル事業がどのように成長し、日本の視聴者や広告主に新たな価値を提供していくのか。その未来に大いなる期待が寄せられています。
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日本におけるFAST展開可能性から東南アジアでのFAST市場の成長と弊社のポテンシャル
日本市場でのFASTの発展可能性を背景に、東南アジアにおけるFAST市場の急速な成長とその中で弊社のポテンシャルについてご紹介いたします。
現在、私はベトナムを拠点とするSupremeTechで活動しており、東南アジア市場へ向けてOTTソリューションの販売に力を入れています。独自にリサーチした結果によると、ベトナムではCTVやFASTサービスを提供する企業が急増していることが分かりました。
この成長の兆しは、東南アジアにおけるデジタル動画配信市場が急拡大していることを示しており、弊社にとっても大きなチャンスとなっています。
さらに、私が約1年前に執筆した記事「OTT(オーバー・ザ・トップ)動画配信市場における最新のトレンドとは?」では、アメリカ市場に焦点を当ててFASTの成長を取り上げました。しかし、あれからわずか1年半で、アジア市場においてもCTVやFASTが急速に広がりつつあります。この急激な変化は、長年信じて取り組んできた開発の方向性が正しかったことを証明しています。
弊社のOTTソリューションが提供する価値
弊社のプロダクトであるCloudTVとOTTcloudsは、アジア市場の急成長に対応した最適なソリューションを提供しています。具体的な強みとしては以下の点が挙げられます:
- FASTチャンネルの迅速な立ち上げ:マルチチャンネルの作成、トランスコーディング、EPG(電子番組表)、スケジューリングなどを一括で提供し、迅速な導入が可能。
- 多言語対応:多言語に対応したサービスを提供し、各国のニーズに柔軟に対応。
- 収益化モデルの多様性:AVOD(広告型)、SVOD(定額型)、TVOD(都度課金型)に対応し、広告やサブスクリプションを組み合わせた最適な収益戦略を構築できます。
- アジア市場に特化した柔軟なカスタマイズ性:アジア市場の特性を理解し、それに合わせた柔軟なカスタマイズが可能です。
これらの強みを活かし、アジア市場でのNo.1シェアを目指して奮闘しています。
グローバル展開の一環としてのPanea Media Platform
さらに、弊社はグローバル展開を進めており、Panea Media Platformという配信システムプラットフォームを立ち上げ、スペイン語圏市場において113のテレビ局と連携を図っています。
この実績を活用し、日本のコンテンツをベトナムにとどまらず、LATAM(ラテンアメリカ)市場にも展開するためのハブとして成長させていきたいと考えています。
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日本のテレビ局とケーブルテレビへの提案
私たちは、Inter BEE 2024を通じて、「一本一本の動画を売る」だけではない新しいビジネスモデルの可能性を提案しました。
具体的には、以下のような取り組みを提案し、新たな市場開拓と収益機会の創出を目指しています。
- 地方コンテンツのリニアチャンネル化と販売
日本各地の魅力あるコンテンツを編成し、リニアチャンネルとして国内外に展開。 - SCTE-35対応の広告挿入による収益モデル
動画配信時に動的広告挿入を可能にし、より柔軟かつ収益性の高いモデルを構築。 - 海外市場へのコンテンツ輸出支援
日本のコンテンツをグローバルに発信するためのプラットフォームとサポート体制を提供。
NHK Worldのように、日本各地の食文化、伝統工芸、寺社仏閣、農業の取り組み、お土産や特産品などをテーマにしたリニア番組を効果的に編成し、海外に向けて販売することは非常に意義があると思います。日本の魅力を世界に発信すると同時に、インバウンドビジネスの促進にも大きく貢献できると考えています。
パートナーや投資家、関係者の皆様への協業のお願い
私たち、Enlyt(日本法人)とSupremeTech(ベトナム拠点)は、OTTソリューションの提供にとどまらず、これまでに100件以上のプロジェクトを成功に導いた豊富な実績を誇るアジャイル開発のプロフェッショナル集団です。
現在、私たちは東南アジア市場におけるOTT配信およびFAST事業の加速を目指し、以下のパートナーとの協業を心よりお待ちしています:
- コンテンツパートナー
- 事業会社
- 投資家の皆様
共に、新たなメディア消費の未来を切り開き、次世代の価値を創造していきましょう。
おわりに
テレビはインターネット接続型デバイスへと進化し、次々と新しい視聴体験が生まれる時代に突入しました。この変革の中で、「スマイLINK」のようなFASTチャンネルは、メディア業界の次なるトレンドとして確固たる地位を築きつつあります。
EnlytとSupremeTechは、その成長の中心に立ちながら、アジアNo.1のFASTソリューションプロバイダーを目指して邁進しています。
私たちがInter BEE2024で得た出会いや学びは、私たちにとって大きな刺激となり、日本市場でのFAST事業の推進とCTV(Connected TV)の普及を通じて、視聴者に新しい体験を提供する使命をより一層強く感じています。
私たちと一緒に、動画配信の未来を共に切り開いていきませんか?
ぜひ、お気軽にご相談ください。
お問い合わせ先
- 日本向け:cloud-tv.jp
- グローバル向け:ottclouds.com
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