AIの技術と市場ニーズを融合させ、より良いものづくりを。R&Dチームをリードするベトナム拠点CEOにインタビュー!
株式会社Enlytでは、ベトナム拠点である株式会社SupremeTechのエンジニアと連携してAI(人工知能)のR&D(研究開発)を行っています。前回の記事では、取り組むに至った経緯や思い、今後の展望についてEnlyt代表取締役のTruong Dinh Hoangに話を聞きました。
今回はその続編として、R&Dチームを引っ張るBinhにインタビューを行いました。ベトナム拠点CEOであるBinhは普段から最新の技術に興味を持っており、自身がAIについての学習を始めたことがきっかけで、R&Dチームが立ち上がりました。その詳しい背景や具体的な研究開発内容、実際にどんなプロダクトが完成したのかなど、現場の話を聞いてみました!
目次
プロフィール
Binh Nguyen T. / ビン グエン Supreme Tech CO., LTD CEO
学生時代は日本へ留学し新卒から約3年間日本で就労。社会人3年目で自分のキャリアを見つめ直し、自身のIT会社を立ち上げるためベトナムへ帰国。会社経営を数年経験した後、ベトナムのオフショア開発企業にジョインし、ビジネスアナリスト、プロジェクトマネージャー、ディレクター業務に携わる。現在は株式会社Enlytのベトナム開発拠点であるSupreme Tech CO., LTDにて、組織作りや新規事業の成長に日々尽力している。
最初は学習チームとしてスタート。出会いに恵まれ、R&Dチームへと成長
BinhさんはCEOでありながら、AIのR&Dチームの中心メンバーとしても活躍されていますね。なぜAIに関わることになったのでしょうか?
今後、AIが一番将来性がありそうだと思っていて、もともと興味を持っていたんです。そこで、業務時間外で自主的に学習会を企画していました。まずはAIに興味のあるエンジニアたちと5人で、Courseraというオンライン講座の機械学習*のベーシックなコースを一緒に受けました。機械学習と普通のプログラミングの考え方は全く違うので、最初は理解だけで苦労していたんですよ。自分一人では勉強が続けられないから、分かったことをお互いにシェアしたり、分からない部分はディスカッションをしたりして理解を深めていきました。
コースを完了して基礎知識がついてからは、オープンソースのライブラリを試してみたり、簡単なデモを作ってみたりしました。
*機械学習:コンピュータに大量のデータを繰り返し学習させ、パターンやルールを発見させることで、予測や分類を可能にする技術。AI(人工知能)の一種。
ただ、進めていく中で2つの課題がありました。
1つは、AIには様々な分野があり、限られたリソースや時間の中でどれを研究したら価値を提供できるのか、取捨選択するのが難しいことです。コンピュータビジョン*をやるのか、自然言語処理*をやるのか。さらに、コンピュータビジョンの中でも認証・識別やAR*関連など、様々な研究対象があります。
2つ目は、技術をある程度習得できたものの「では実際どういう機能を作れば良いのか?」というプロダクトデザインの課題です。
*コンピュータビジョン :顔認証や画像認識など、コンピュータに人間の目のような機能を持たせることを目的とした学術分野。 *自然言語処理:人間が日常的に使っている話し言葉や書き言葉の意味を、コンピュータで解析する処理技術。 *AR:Augmented Realityの略。日本語では「拡張現実」スマートフォンのカメラやARグラスなどを通して、現実世界にナビゲーションや3Dデータなどを出現させ、現実世界の情報を拡張する技術。
そんな中、前回の記事にあったとおり、社長からの紹介で在日ベトナム人のAIスペシャリストとの出会いがありました。
彼から将来性の高い技術を教えてもらい、また彼からの紹介でビジネスパートナーと連携することで、技術やプロダクトデザインの方向性を示してもらいながら研究開発を進めることができるようになりました。
今は、僕含めて7人のチームで研究開発を進めています。1年ほどやっていく中で、少しずつプロダクト化も実現してきました。
ディープラーニングで顔認証や画像認識ができるように。研究開発内容・プロダクト紹介
ご自身の興味から始まった業務外の活動が、今のR&Dチームに繋がっていたのですね。それでは、具体的にどんな技術を研究開発しているのか教えていただけないでしょうか?
私達が研究開発しているのは、AIの中の機械学習という分野です。機械学習というのは、簡単に言えば、作ったプログラムに学習させることによってどんどんできることが増えていくものです。特に最近機械学習の中で流行っているのが、ディープラーニング*です。
ディープラーニングは人の脳の動き方を真似するアーキテクトで、人ができるタスクを学習させ、実行できるようにするものです。この技術を応用すると、時間をかけずに顔認証や写真の中の物を認識して判別するといった機能を開発できます。
*ディープラーニング:画像識別や音声認識など、人間が行うタスクをコンピュータに学習させる手法。
プロダクト①リアルタイムで動画内の人物・背景に加工を施せるSDK
なるほど。AIというとちょっと難しく感じてしまうのですが、写真アプリなど既に身近なものにも使われている技術なんですね。研究開発の中で何か成果はあったのでしょうか?
そうですね。顔認証や物の認識は比較的簡単にできます。ただ、例えば認識した後にリアルタイムで顔に化粧をさせるような処理は難しいのです。どうしたらインターネット接続がなくともスマートフォンのローカル内で処理できて、処理速度が速く、リアルタイムに反応できるのか。そういったことを研究開発して、SDK*を作りました。
このSDKでは、通話中リアルタイムで背景を消したり、マスクや化粧をさせたりといった機能をご提供できます。
*SDK:Software Development Kitの略。ソフトウェアを開発するための環境・プログラムの部品などが詰め込まれた一式のこと。
プロダクト② 過去問のデータを自動で収集・反映!大学受験用英単語アプリ
また、もう一つ事例としてご紹介したいのが、共同開発し最近リリースしたCASTDICE英単語帳というアプリです。日本の高校生が大学受験英語を勉強するための単語帳アプリで、その中にAIを使った機能があります。
このアプリには180大学の過去問の英単語が入っているのですが、自分が受験したい大学を選択すると、自動的にその大学の過去問データからよく出る単語を集め、カスタマイズされた単語帳を作ることができるのです。
どうやってこの機能を実現しているかというと、まずは各大学のWebサイトからクローラー*を使って、自動的に過去問をダウンロードします。ただ、ダウンロードされたものは画像ファイルで何万枚もあるため、画像ではなくテキストとしてデータベースに保存したい。
そこで、画像処理のAI技術が使われます。OCR(Optical Character Reader)という、簡単に言うと画像ファイルからテキストを出力することができる技術です。何万枚もの過去問の画像データを読み込み、文字列を出力・統計して、良く出てくる順番に単語のスコアを高くし、スコアの高い順に並べた200単語、1000単語の単語帳を作ることができるのです。
*クローラー:Web上にある文章や画像などの様々なデータを自動的に収集するプログラムのこと。
ただ、OCRの技術は決して新しいものではなく、2〜30年前からある技術です。確かに誰でもできるような簡単なものではないのだけど、うちしかできないというわけではありません。
大事なのは、その技術をどうやってビジネスに活かすかということ。
僕たちR&Dチームがやることは、お客様から「こういう機能を作りたい」というご要望をいただき、「それならここにこういったAI技術を入れると、より良いプロダクトを提供できます」という風に調査・提案することです。
今後も、僕たちR&Dチームの知見とお客様のビジネス市場での知識を融合させて、より良いものを作っていきたいと考えています。
しかし、研究開発した技術をどんな風に応用できるか、どんなニーズがあるかは、僕たちにも計り知れないところがあります。「こんなプロダクトを作ってみたい」「こんなことできますか?」といったお悩みやご要望があれば、ぜひお問い合わせボタンからお気軽にご相談ください!
14.5万人のAI人材が不足する未来。今注目の技術と、今後の目標
既にある技術をどうやって応用していくかが鍵ということですね。最後に、次に注目している技術や、今後の目標についても教えていただけますか?
現状のAIアプリケーションはサーバーへの依存性が高いですが、その依存性を低くしていくのがトレンドになっています。今後はサーバーではなくスマートフォンやWebブラウザ、IoT*デバイスの中での処理がメインになってくると思います。例えば、自分の家の玄関に顔認証機能を入れたい場合、カメラ付きIoTデバイスの中だけ、しかも100ミリ/秒以内という速さで処理できるようにしたいです。
*IoT:"Internet of Things"の略。コンピュータなどの従来の情報通信機器だけではなく、自動車や家電のようなあらゆる物をインターネットに接続する技術。
AIの技術は、一見魔法のように見えるかもしれません。でも現段階で普及していないだけで、今後は世の中の常識になっていくと思います。例えば、電気も発明された時は革新的な技術でしたが、今、日常生活に電気があるのは当たり前のことですよね。
経済産業省の「IT企業の人材需給に関する調査」によれば、既に日本ではAI人材が不足しており、2030年には14.5万人足りなくなると言われています。
株式会社Enlytは今後、そんな時代の中で活躍できるAIエンジニアを数多く輩出していきたいと思っています。
Enlytについて
株式会社Enlytはベトナムに開発拠点SupremeTechを持ち、これまで50以上の開発プロジェクトを行ってきました。ベトナムと日本のグローバルなチームで、数多くのプロジェクトを成功に導いてきました。
Enlytのオフショア開発は、アジャイル・スクラム開発を採用しています。コミュニケーションの透明化を意識してそれぞれの役割で責任の範囲を明確化しています。クライアントも含めたワンチームとして、フラットな関係で開発を進めることができます。
お客様の納得のいくまで、共に開発させていただき、アイデアを最高のかたちにサービス化いたします。
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