
IPユニキャスト放送で、新たな市場を切り開く!動画配信TVアプリのPoC開発
ケーブルテレビ事業から始まり、これまでに培ったインターネット通信技術の知見を活かしてICTソリューションサービス、eスポーツ・テクノスポーツの企画・運営まで幅広く事業展開している株式会社コミュニティネットワークセンターさま(以下:CNCI)。
今回はそんなCNCIの中でも新規事業としてIPユニキャスト放送のTVアプリのPoC開発の依頼を受け、Enlytが同社の佐久間氏、三輪田氏にEnlytへ開発を依頼された背景、開発着手後の感想、今後の展望を伺いました。
開発した内容について
今回はEnlytのCloudTVの技術を使用し、PoCとしてTVアプリ(FireTV、AndroidTV)を制作しました。
機能の特徴
・IPユニキャスト放送で、かつAWSを使用したクラウドでありながら自社インターネット回線網内環境での検証
・海外の流行りを取り入れたテレビ慣れしている日本人向けUI/UX
・サービスロゴの作成

▼詳しくは開発実績をご覧ください▼
株式会社コミュニティネットワークセンター | 動画配信TVアプリのPoC開発
開発を依頼された背景

— はじめに、なぜ今回このTVアプリ制作を検討されたのでしょうか?
CNCI: 背景としては何点かあります。
まず1点目としては弊社の共通認識で放送事業の現状として、加入者が減少している事実があります。
特に、ご存知のとおり、Netflixなど映像サービスの多様化、そもそもスマートフォンでも生放送を見ることができ、動画・映像を見るデバイス自体も多様化しています。その中でも、ケーブルテレビ事業者の私たちは、テレビを視聴するためにまず工事をし、STB (セットトップボックス)を設置し、番組を選んでいただくという工程を20年以上前から変わらず行っています。
世の中がこれだけ変化している中、私たちも大きく変わっていく・変えていく必要がある。
そう思ったことが大きな動機です。
2点目は、その工事でお客様に待っていただく必要があること、また会社としても工事の手間をかけざるを得ないことです。
アプリ化を行えば工事が不要になります。そのため、会社的には工数の削減になり、お客様は工事を待つ必要もなく、見たい時にアプリをインストールした上で加入いただくことができ、ユーザビリティも向上します。
3点目は、テレビの配信は基本的に配信側からの片方向になる仕様上、お客様の視聴データが取りづらく、リアルタイムでのデータ収集は難しいという課題がありました。
その点、今回導入のIPユニキャスト放送は双方向仕様になります。
お客様のデータがリアルタイムで収集できるだけでなく、まだ構想段階ですが、リアルタイム視聴ランキングのような機能を追加し、よりお客様に楽しんでいただけるコンテンツの提供を検討しています。
— そのような背景の中、PoCでテレビアプリを開発しようと思われたのはなぜでしょうか?
CNCI:2年ほど前から構想し始めていました。
当時はAbemaTVやNetflixなどが台頭しており、同様にIPを利用した私たちのサービス内容をPowerPointで用意し、その便利さを各所に説明しました。しかし、存在しないサービスを説明したところで紙芝居では伝わらず、その上、「本当に実現できるのか?」という声があがり、先にPoCとして動くものを作る方向性にしました。

— PoCの実施で特に検証したかったポイントや重要視されたポイントはどこでしょうか?
CNCI: まず、技術的な観点で実際にしっかり放送ができることの証明です。
特に画質や遅延の問題です。
私たちもハイビジョンでの放送ですが、高画質になると遅延の問題が付きまとうので、映像の品質を維持した状態での放送を重要視しました。
次に付随機能です。
単に番組を選んで視聴するだけではなく、その番組を見れば見るほどポイントが貯まるような視聴ポイント機能や通販番組のライブコマースの機能、さらには、テレビを見ながら購入したいときにリモコンで商品が買える機能、 コメント機能のようなお客様のUXを「見る」から「楽しむ」に変える機能です。
実際にその2つのポイントをPoC制作後、50~60社ぐらいの関係者に実際に見ていただき、様々な意見を頂戴しました。
実施するPoCのシステムクオリティとしては十分だったと考えています。
Enlytへの発注を決めた背景

— そもそもEnlytをどういった経緯で知っていただけたのでしょうか?
佐久間氏:: 御社が配信システムをアメリカや南米で展開していたころ、タイミングよく私たちも海外のアプリ、配信周りを扱っている企業をチェックしており、Enlytさんを見つけました。
— さまざまな企業を検討される中で、Enlytへの発注は何が決め手となったのでしょうか?
佐久間氏: 私たちがベンダー選定を行う上では、日本の放送業界の独特な文化や商習慣のニュアンスへの理解が重要だと考えています。
一方で、動画配信技術のグローバルスタンダードを理解し、海外での知見も持ち合わせていることも重要であるため、御社から提案をいただいた際、その双方が揃っている印象を強く受けたことが決め手です。
配信基盤構築周りをお願いしているJストリーム様と一緒に何かおもしろいことができそうだなと思い、その後、さまざまなお話をさせていただきました。
Enlytとの開発
— Enlytの開発でUI/UX設計の進め方はいかがでしたか?
CNCI: アプリを作る際に、佐久間の説明内容を頭の中でイメージし難く、その点を的確に見える化していただけたことが本当にありがたかったです。
また、必要な機能のアイデア出し、私たちの意図も汲み取っていただいた上での追加の提案、さらにそれを言語化やビジュアライズ化する点がEnlytさんにお願いして一番よかったと思う部分です。

— という感想をいただきましたが、佐久間さんの中で想像していたものは実現できましたか?
佐久間氏: 自分のイメージよりも、本当にすごくいいものを作っていただいたと思っています。
ケーブルテレビを扱っている以上、基本的には日本の人たちがユーザーで、日本人が慣れ親しんだテレビライクなUIデザインを表現する必要がありました。
今回、それを見事に実現できたと思っています。
さらには、私が思いもつかなかった海外で流行している機能などを教えていただき、具現化のサポートしてくださったので、とてもよかったと思っています。
— Enlytのアジャイル開発で、実際に「ここは良かった」と感じたところはありましたか?
佐久間氏: オフショアでの開発という点を含めていい経験ができたと思っています。
アジャイル開発の良さである、完成した機能からリリースし、使い勝手が良いか試した上で本当に必要かを取捨選択するフローが非常にスピーディーにできました。
今回協力先からの番組情報が遅れて出てきたため、スケジュールから遅れた共有になりましたが、納期に間に合わせるよう、改修を含めて、ものすごいスピードで対応いただきました。
Enlytさんの開発はそのスピード感が強みだと感じました。
PoCの成果

— TVアプリPoCの成果として想定していた結論に至りましたか?
CNCI: 動くものを作り、UX面を検証できた点が大きいと思っています。
私たちは技術的な検証や、ものづくりを先行させるため、商品設計や販売戦略などの議論は技術検証の後に行っています。なぜなら、「モノ」自体がないと議論が始まらないからです。
今回のPoCを営業メンバーに共有した際、ようやく具体的な売り方や既存商品と並べた時の見え方などがイメージでき、紙芝居では実現できなかった議論が行えました。
PoCを通して、営業メンバーにも私たちの本気さが伝わり、向き合ってくれたことが一番の成果だと思っています。
— 社内外から具体的なフィードバックは得られましたか?
CNCI: 社内メンバーはやる気に満ちた一方で、番組供給会社の方々からも評価をいただきました。
番組制作側は「お客様に魅力的な訴求ができていないため良いものを作って供給しても視聴されない」という歯がゆさがあるようで、今回のPoCアプリであれば、その点は解消すると高い期待感を持っていただきました。
さらに、PoCの完成度が非常に高かったため、試験的にアプリを制作したにも関わらず、「このアプリはいつからサービス開始しますか?」と勘違いされることが多々ありました。
お客様への具体的な訴求方法も議論でき、私たちも商品企画を進めた上で社外の方に見てもらえれば、より具体的なフィードバックが得られたと思います。

— ノウハウとしては溜まっていますか?
三輪田氏: 今回、RFという既存の仕組みから、IPでの映像配信技術を用いてクラウドかつ自社のインターネット回線網内という特殊な環境で構築をしたことにより、知見として得るものは多々ありました。
また、今後の全体的なシステム構成の検討にあたり、技術面やコスト面でのポイントも整理できました。
一方で、映像再生のレスポンスなどはアプリ側のプレイヤーに依存する部分も多くあるかと思います。
Enlytさんにプレイヤーの動作などを高いレベルでサポートいただいたからこそ、初めて使用した際に「こんなにサクサク動くんだ」という感銘を受けたのだと思っています。
プレイヤーがいかに重要か、とても勉強になりました。
今後の展望

— PoCを経て、今後どのように進める予定でしょうか?
CNCI: これまではPoCを最優先に取り組んできましたが、今後は事業戦略をしっかり立て、商品設計・販売戦略を進める予定です。
今回Jストリーム様に構築してもらった配信面は、基本的にVODの仕組みを採用しています。20時間止めてはいけないという放送の考え方をベースとすると、VODの2時間動けば問題ないという極論的発想は放送に携わる者として少し不安があります。24時間365日止まらないシステムを、もう一度考える必要があると思っています。
また、今回はAWSに環境を作成し、キャッシュサーバーをローカルに置く構成にしました。しかし、AWSやクラウドは従量課金のため、加入者数に応じたシステム・サーバー構成の最適解を商用化に対して今後探していきたいと考えています。
スモールスタートを取り、規模が大きくなることを見据えてスケールメリットを活かせる設計をしていきたいです。
総務省が2026年の10月から地上波サテライト小規模中継局のIPユニキャストの制度運用を開始すると宣言しているため、1年半後に私たちもサービススタートに向けて交渉、協議をする必要があると考えています。
その前段階として、まずはケーブルテレビ連盟や、衛星放送協会という関連団体との連携に向けて、私たちのサービスを認めていただけるよう進めていきます。
開発メンバーへのコメント
— 最後に開発に携わったメンバーへコメントをお願いします。
佐久間氏: 今回、オフショア開発を初めて経験し、本当にベトナムで開発が進んでいるのか、という不安もありました。しかし、実際にしっかり作り込まれているアウトプットを見ると、開発拠点のSupremeTechの技術力の高さ、スピーディーさを実感することができました。
三輪田氏: この短い3ヶ月という構築期間で完成できた要因として、一番難しいシステム結合の箇所をEnlytさんに工夫いただいたことがあると思います。事前にEnlytさん側で動画プラットフォームを仮で作っていただいて、アプリとの結合確認を行っていただいたことにより、スムーズに進められました。
また、アプリのUIがとても洗練されており、社内外からも好評でセンスの良さを感じました。初めてのことが多く、当初不安はありましたが、そのような点から安心して取り組みを進められました。
ありがとうございました。
CNCI: またIP放送以外でもぜひ一緒に仕事ができればと思っています!
— 素敵なお話をありがとうございました。今後の進展を楽しみにしています!
クライアント企業概要

■企業名:株式会社コミュニティネットワークセンター
■設立:2000年2月2日
■コーポレートサイト:https://www.cnci.co.jp/