アプリの維持費は開発費の15%が相場って本当?内訳と15%に収まらないアプリの違い
アプリの維持費について調べると、「開発費の15%程度」という数字によく行き当たります。ただ、この数字だけでは、社内で予算の根拠を説明できません。なぜ15%なのか、自社のアプリも15%以内に収まるのかがわからないためです。
結論から書くと、15%は目安として使える数字ですが、すべてのアプリが15%で収まるわけではありません。15%に収まりやすいアプリと、超えやすいアプリには、いくつかの傾向があります。
この記事では、15%が目安として使われる理由を確認したうえで、維持費の内訳、費用が増減する要因、削減するときの注意点を整理します。
目次
アプリの維持費は開発費の15%が一つの目安
年間の維持費を考えるとき、初期開発費の15%を予算の仮置きに使う考え方があります。開発費ごとに当てはめると、次のようになります。
| 初期の開発費 | 年間の維持費の目安 | 月あたり |
|---|---|---|
| 300万円 | 約45万円 | 約3.8万円 |
| 500万円 | 約75万円 | 約6.3万円 |
| 800万円 | 約120万円 | 約10万円 |
ただし、この15%は統計に基づく一律の相場ではありません。通常の監視や軽微な不具合対応、OS更新時の確認、サーバー利用料などを想定した予算の出発点です。大規模な機能追加、24時間365日の監視、システムの移行、利用者の急増に伴う増強などは、別に見込む必要があります。
初期の予算を仮置きする数字としては使えますが、実際には保守の範囲を確認して調整する必要があります。
15%という数字はどこから来ているのか
15%という割合そのものに、公的な根拠があるわけではありません。多くのアプリでは、次のような費用が継続的または一定の頻度で発生するため、初期開発費の一定割合を維持費として見込む考え方があります。
- OSの更新への対応 iOSとAndroidでは例年、大きな更新があります。そのたびに動作確認が必要になり、仕様変更があれば改修も入ります
- サーバーなどの利用料 サーバーと通信して動くアプリでは、公開している間、クラウドや外部サービスの利用料が継続します
- 不具合への対応 利用者から報告を受け、原因を調査して修正するための作業時間がかかります
アプリの規模や複雑さは、初期開発費だけでなく、動作確認や改修に必要な時間にも影響します。そのため、初期開発費に対する割合が予算の目安として使われています。ただし、両者が常に比例するわけではありません。
このため、初期開発費だけでは実際の維持費を決められません。次に、15%に収まりやすい条件と、超えやすい条件を見ていきます。
15%に収まるアプリと、収まらないアプリ
目安どおりに収まりやすいのは、次のような状態です。
- 公開したあと、機能を大きく足す予定がない
- 利用者の数が読めていて、急に増える見込みがない
- 外部のサービスや自社の基幹システムとの連携が少ない
- 作った会社がそのまま保守を続けている、または資料が揃い、別会社への引き継ぎが完了している
一方、15%では足りなくなりやすいのは、次のような状態です。
- 公開後も機能を足し続ける前提のサービス 改修の費用が毎年乗るため、維持費というより継続的な開発費になります
- 利用者が増えると処理も増えるつくり 動画や画像を扱う、常時通信する、といったアプリが該当します
- 外部のサービスに依存している部分が多い 連携先の仕様変更によって、自社では実施時期を選べない改修が発生することがあります
- 別会社への引き継ぎ直後である 引き継ぎ直後は、既存のコードや構成を調べる時間が必要です。調査と資料化が進めば、その後の作業時間を短縮できる場合があります
- 設計資料や運用資料が残っていない 小さな改修でも、既存のコードや構成を調べるところから始める必要があります
- 初期開発費が小さい ストア登録料や保守契約の基本料金など、開発費に関係なく発生する費用の割合が大きくなります
- 夜間・休日を含む監視や短時間での復旧が必要 対応する時間帯や復旧までの条件が厳しいほど、待機する体制の費用が増えます
見積りを受け取ったときに「思ったより高い」と感じたら、まず自社のアプリがこの7つのどれに当たるかを確認してみてください。金額の妥当性を判断する材料になります。
アプリ維持における運用と保守の違い
運用と保守の分け方に統一された基準はなく、会社や契約によって異なります。一般には、日々の監視や定型作業を運用、不具合の修正や環境の変更を保守と分けます。
アプリ運用業務の内容
運用は、アプリを動かし続け、使ってもらうための日々の作業です。
- サーバーやエラーの監視
- バックアップの実行と復元確認
- 利用者からの問い合わせ対応
- コンテンツ、会員情報、マスタ情報の更新
- 利用状況の集計
自社で担える部分も多く、どこまでを委託するかで金額が変わります。
アプリ保守業務の内容
保守は、アプリに手を入れる技術的な作業です。
- 不具合の原因調査と修正
- OSやライブラリの更新への対応
- セキュリティ上の問題への対応
- 障害発生後の復旧や構成変更
こちらは外部に任せることが多い部分です。ただ、大切なのは呼び方ではありません。見積書に、ここに挙げた作業のどれが含まれているのかを1つずつ確認すると、金額の差の理由が見えてきます。
アプリ維持費の主な内訳
維持費は、大きく4つに分けられます。
①サーバー費用
アプリのデータを預かり、処理をする場所にかかる費用です。AWSやGoogle Cloudなどのクラウドを使う場合、使った分に応じた料金になります。
金額を左右するのは、主に次の4つです。
- 利用者の数と、同時に使われる人数 同時に集中する時間帯があるかどうかで、必要な性能が変わります
- 扱うデータの種類と量 文字だけのアプリと、画像や動画を保存するアプリでは、保管と通信の費用が大きく変わります
- 通信の頻度 位置情報を常に送る、リアルタイムで更新するといったつくりは、通信量が積み上がります
- 求められる安定性 障害が起きてもサービスを止められない場合は、サーバーの二重化、監視、複数世代のバックアップなどが必要になり、費用が増えます
小規模なアプリなら月額数千円から数万円に収まることもありますが、利用者数、処理量、通信量が増えると費用も上がる場合があります。公開後も、実際の利用状況に合わせた見直しが必要です。
②アプリストア登録・更新費用
iOSとAndroidでアプリを配信するには、それぞれ開発者としての登録が必要です。
- Apple Developer Program 年会費は99米ドル、または現地通貨での相当額です。現地通貨での金額は地域によって異なります(Apple Developer Program)
- Google Play Console 登録料は25米ドルで、1回限りの支払いです(デベロッパーアカウントの登録|Google Play Console ヘルプ)
金額としては小さい部分ですが、扱いが2社で違います。Apple Developer Programは毎年の更新が必要です。メンバーシップが失効すると、App Storeからアプリを新しくダウンロードできなくなり、新しいアプリや更新版も提出できなくなります。Google Play Consoleの登録料は初回のみですが、アカウント情報の確認やポリシーへの対応は継続して必要です。誰がアカウントを管理しているか、社内で把握しておくことが大切です。
③人件費・保守・運用委託費用
維持費のなかで大きな割合を占めることが多い部分です。社内で対応する場合は人件費、開発会社に任せる場合は委託費として発生します。
委託する場合、月額は契約の内容によって幅があります。金額の差を生むのは、次のような条件です。
- 対応してもらえる時間帯(平日の日中だけか、夜間や休日も含むか)
- 連絡してから着手までの時間の取り決めがあるか
- 毎月一定の作業時間が含まれるか、都度の見積りか
- OSの更新対応が月額に含まれるか、別途になるか
安く見える見積りは、このうちいくつかが含まれていないことがあります。逆に高く見える見積りは、OSの更新対応まで込みになっていることがあります。金額だけを並べて比べると、この差が見えません。
④機能追加・改修費用
公開してから足す機能にかかる費用です。厳密には維持費というより追加の開発費ですが、年間の運用予算に含めて管理する企業も多いため、あわせて見込んでおく必要があります。
改修費を左右するのは、コードや設計資料がどの程度整理されているかです。整理されていれば、機能追加に必要な調査時間を抑えられます。反対に、初期費用だけを優先し、保守しやすさを十分に考えずに作ると、公開後の改修費が膨らむことがあります。
アプリ維持費が増減する要因
システムの機能や複雑さ
機能の数だけでなく、外部との連携の数が効いてきます。決済、地図、通知、認証、自社の基幹システム。つながっている先が増えるほど、相手側の仕様変更に合わせた改修が発生します。連携先の仕様変更によって、自社では実施時期を選べない改修が発生することがあります。
ユーザー数やデータ量
利用者が増えると、処理量やデータ量に応じてサーバー費用が上がることがあります。問い合わせ件数が増え、対応する人件費が大きくなる場合もあります。
ただし、利用者が増えること自体は事業としては望ましい状態です。維持費を見るときは総額だけでなく、利用者1人あたりにいくらかかっているかを計算しておくと、増えた費用が妥当かどうかを判断しやすくなります。
1年目より、2年目以降のほうが高くなることがある
維持費が毎年同じになるとは限りません。公開直後の不具合対応や問い合わせが多く、1年目の費用が高くなる場合もあります。一方、時間の経過とともにライブラリが古くなったり、担当者が入れ替わったりして、2年目以降に費用が増えることもあります。
2年目以降に増えやすいのは、次のような変化が起きたあとです。
- 担当したエンジニアが入れ替わった
- 使っているライブラリの提供が終わり、置き換えが必要になった
- OSの更新が重なり、対応の範囲が大きくなった
- 利用者が増え、公開時の構成では足りなくなった
年間の予算を立てるときは、初年度と同じ金額が続く前提にするのではなく、数年分を見通した金額で考えるほうが安全です。複数年で見る考え方は「アプリリリース後にかかる保守費用の相場と削減方法」で解説しています。
アプリ維持費を抑える3つのポイント
①実装機能の厳選とミニマムスタート
機能や外部連携が増えるほど、動作確認や改修の対象も増え、維持費が高くなる傾向があります。使われない機能も、OSの更新のたびに動作確認の対象になり、不具合が出れば直すことになります。
なお、使われていない機能は、画面から隠すだけでは維持費が下がらないことがあります。コード、API、データ処理、テストの対象から実際に外して初めて、保守の範囲を減らせます。
必要な部分から公開して、反応を見ながら育てる進め方であれば、初期費用と維持費の両方を抑えやすくなります。この考え方は「MVPとは?」で整理しています。
②サーバー契約プランの最適化
公開から時間が経つと、実際の利用状況が見えてきます。想定より小さい規模で動いているなら、契約している性能を下げられることがあります。
逆に、利用が集中する時間帯だけ性能を上げる構成にできる場合もあります。1年に一度は、実際の使われ方と契約内容が合っているかを見直しておくとよいと思います。
③複数社の相見積もりを比較する
保守の委託先は、変更できます。ただし、金額だけで比べると失敗しやすい部分でもあります。
比べるときは、先に挙げた4つの条件を揃えて聞いてください。対応時間帯、着手までの時間、含まれる作業量、OSの更新対応の扱い。この4つを揃えると、金額の差が何の差なのかが見えます。
あわせて、引き継ぎにかかる費用も確認しておきたいところです。別の会社が作ったアプリを引き継ぐ場合、中身を読み解く時間が初めに必要になります。引き継ぎ調査の費用が含まれていない場合は、あとから追加費用が発生することがあります。
ここまでが、維持費を抑える3つのポイントです。ただし、削減対象にしないほうがよい費用もあります。
削らないほうがよい費用
- セキュリティに関する更新 問題が見つかったときの対応が遅れると、影響の範囲が広がります
- バックアップ 戻せない状態になると、復旧そのものができなくなります
- OSの更新への対応 放置すると、新しい端末で動かなくなったり、ストアでの配信に影響が出たりします
削る順番としては、使われていない機能の廃止、契約している性能の見直し、運用作業の内製化から検討するほうが、影響が小さく済みます。
維持費が重いと感じたときに、検討できること
ここまでを踏まえても費用が重いと感じる場合、選択肢は「安くしてもらう」だけではありません。
- 保守の委託先を変える アプリ自体に問題がなく、対応の速さや費用の根拠に不満がある場合
- 作り直す 中身が読み解きにくく、1つ機能を足すだけでも調査に時間がかかっている場合
- WebやLINEミニアプリへ移行する 実際に使われている機能が、店舗検索や会員証の表示などに限られている場合
- 公開を終える ほとんど使われておらず、同じことが別の手段でできている場合
どれを選ぶかは、実際に使っている人数と、1人あたりの維持費、直近1年の改修の中身を見て判断します。この判断の進め方は「アプリのリニューアルで作り直す前に」にまとめています。
なお、初期の開発費そのものの相場については「アプリ開発の外注費用はどれくらい?」で解説しています。
まとめ|アプリの維持費を想定し計画的な開発を
アプリの維持費を初期開発費の15%で仮置きするのは、OS更新時の確認、サーバーなどの利用料、不具合への対応といった費用が、継続的または一定の頻度で発生するためです。アプリの規模や複雑さは対応に必要な時間にも影響するため、予算の出発点としては使えます。ただし、15%は統計に基づく一律の相場ではなく、開発費と維持費が常に比例するわけでもありません。
15%を超えやすいのは、公開後も機能を足し続けるサービス、利用者の増加に伴って処理量が増えるアプリ、外部サービスとの連携が多いアプリなどです。別会社への引き継ぎ直後や資料が残っていない場合、初期開発費が小さい場合、夜間・休日を含む監視や短時間での復旧が必要な場合も、15%では足りなくなりやすくなります。
見積りを比べるときは、金額より先に、対応してもらえる時間帯、着手までの時間、含まれる作業量、OSの更新対応の扱いを揃えて確認してください。ここが揃っていない見積りは、比べようがありません。
費用が重い場合は、値下げ交渉だけでなく、委託先の変更、作り直し、WebやLINEミニアプリへの移行、公開終了も選択肢になります。実際の利用状況をもとに、自社に合う方法を判断することが大切です。
Enlytのアプリ運用保守
Enlyt(エンライト)では、自社で開発したアプリだけでなく、他社が開発したアプリやシステムの引き継ぎもお受けしています。前の会社の資料が足りない場合は、動いているものから仕様を読み解いて資料化するところから始めます。詳しくはプロダクト・システム運用保守サービスのページにまとめています。
数百万人規模の利用者を抱えるアプリで、運用保守と機能追加を継続して担当している案件もあります。前の開発会社での不具合対応が追いつかない状態からの引き継ぎで、デプロイの自動化やインフラ環境の見直しを進めながら、ポイント機能の追加開発も並行して行いました(飲食チェーンのiOS・Androidアプリの開発事例)。
よくいただくご相談は、こうしたものです。
- 保守費用の見積りをもらったが、金額が妥当かどうか判断がつかない
- 改修を頼むたびに費用が膨らんでいて、理由がわからない
- 作った会社と連絡が取りづらくなり、引き継ぎ先を探している
- 維持費を下げたいが、どこを削ってよいのかがわからない
また、Enlytでは、こうしたコスト削減のポイントをおさえたアプリ開発もお受けしています。無料のヒアリングをもとに要件を整理し、必要な機能だけに絞ったお見積りをご提案できます。他社との比較検討も歓迎しています。条件によっては月額10万円未満の保守プランもご用意しています。
いまのアプリの状態を確認するところからご相談いただけます。サービスの内容はサービス紹介ページに、ほかの案件は開発実績の一覧に、開発と運用の進め方をまとめた資料はお役立ち資料にあります。
アプリの運用保守なら、私たちEnlytにご相談ください!
アイデアの本質を深く理解し、認識のズレを生まない進め方で、要件が固まる前から並走します。受注前の無料コンサルティングもご用意しています。小さなことでもお気軽にご相談ください。




